建築構造

リフォームの基礎知識-木構造に使われる木材の特徴とメリットを解説-

建築の相談段階でよく見聞きするのが、この木材の種類でしょう。
「床材はどんな素材にしましょうか。どんなイメージがお好みですか」といった話題も多いはずです。

今回の記事では木材の種類から特長までを解説していきます。




木材の種類

木材は大きく分けて2種類に分類されます。

針葉樹材
広葉樹材

この2種類の木材について紹介します。

針葉樹材

春材・秋材による年輪がはっきりしています。
また木目が通っており、加工しやすく軽いため「軟木」といわれています。

国産材では、ヒノキ・スギ・マツなど。
輸入材では、ベイヒ・タイヒ・ベイマツ・ベイツカなど。

針葉樹材は構造材だけでなく、造作材。建具材などに広く使われています。

広葉樹材

針葉樹に比べると、一般に強度が大きく硬くなっています。
そのため「堅木」と呼ばれている。

針葉樹との見た目の違いとして、年輪がはっきりしていません。

未加工の材面は荒いのですが、仕上がると美しくなるものが多いです。
その特性を生かし、家具や建具・化粧板など使われています。

国産材は、ケヤキ・ナラ・シオジ・クリ・カシ・サクラなど。
輸入材は、チーク・マホガニー・ローズウッドなど。

日本では広葉樹を構造材として用いることが少なくなっています。
しかし、ケヤキは従来から構造材としても使われています。

針葉樹と広葉樹は「細胞」が違う

先がとがり細い葉の針葉樹と、扁平な形の葉の広葉樹。

針葉樹と広葉樹は、一般に知られているように葉の形から見分けられます。

幹は、針葉樹はまっすぐ伸びているのに対し、広葉樹は太くて曲がっていることが多く、さらに枝分かれしているのが特徴です。
広葉樹で私たちがもっとも目にするのは桜でしょうか。
その広がった枝ぶりをイメージすると違いが分かりやすいと思います。

外見の違いだけではなく、針葉樹と広葉樹は細胞と組織の成り立ちが異なっています。

針葉樹の組織は単純で、大半の樹種は90%以上が仮道管で占められています。

仮道管とは、水を根から樹幹を通して葉へ送る通路のことです。
それに木そのものを支える役目も担っています。

細胞の構成は非常に単純で、配列は整然としています。

広葉樹の組織構造は複雑で、細胞の種類が多いだけではありません。
細胞ごとの機能も分業・専門化しています。
水分の通り道は主に道管が、木を支えるのは主に木部繊維が担っています。

また、養分の貯蔵機能をもつ柔組織といわれる組織も発達しています。

人間の身体に置き換えて、筋肉と血管がひとつになっているのが針葉樹。
筋肉と血管がそれぞれ独立して別々の働きをしているのが広葉樹と考えると分かりやすいですね。

複雑な構造をもつ広葉樹は、針葉樹に比べ多様な性質を持つことになります。

木材の効果

癒し効果

木の柔らかさ、温かみ、香りは人の気分を和らげてくれる沈静作用があります。
やすらぎと心地よさをもたらすことで、快適な癒しの空間を演出することができます。

高い断熱性能

木は鉄やコンクリートに比べて熱を伝えにくいという特性を持っています。

木材(杉)の熱伝導率を1とするとコンクリートは約12倍。
鋼材は480倍となり木材が高い断熱性能を有していることが判ります。

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健康空間を形成

木の香り(フィトンチッド)は様々な効果を持っています。
消臭や防ダニ・殺虫・抗菌・抗カビ等さまざまな作用があることが実証されています。
ほかにもリフレッシュ効果もあります。

また、木は人体に有害な紫外線を九州し、目や肌に受ける刺激を少なくする特性を持ちあわせています。

優れた調湿効果

日本の「高温多湿」気候です。
そこで快適に暮らすためには湿度対策がかかせません。

木は湿度が高くなると湿気を吸収し、乾燥すると湿気を吐き出すという調整機能を持っています。

バランスよい音響効果

木は音をバランスよく吸収するという特性を持っています。

音響効果を大切にするコンサートホールなどに木造建築が多いのはその特性を有効に活用しているためです。

木材の性質

短所・長所

木材の一番の短所といえば、可燃性であることです。

他には乾燥収縮し、狂い・変形が生じることです。
同じ樹種でも力学的性質に幅があります。

高温多湿な環境では腐敗しやすく、虫害を受けやすいことがあります。

長所は軽量であることです。

加工性がよく、重量に対して強度が大きい事です。

釘打ち、ビス止めなど施工性が良いことがあります。

また熱伝導性が小さく結露しにくいことです。

他にも木目がが美しく感触が良いことがあげられます。

木材の水分

木材が含む水の量を、その木材自身の質量(完全に水分を取り除いた状態)で割った百分率を含水率といいます。

この含水率が約30%以上では、含水率が変化しても木材の伸縮は生じません。
それ以下ではほぼ含水率に比例して伸縮が生じます。

この30%の含水率を繊維飽和点と呼ばれています。

木材は乾燥するほど含水率が低下します。
木材の乾燥に伴う収縮の割合は、各方向によって異なります。

木取り位置や断面形状により、変形したり狂いや割れが生じたりします。

木材を通常の大気中に置いて、乾燥した状態のときの含水率を気乾含水率といい、日本では15%と定めています。

この状態の木材を気乾材といいます。

木材の強度

木材の強度を表す4種の表現方法があります。

圧縮・引っ張り・曲げ・せん断

木材は、鋼材のように均質ではありません。
品質管理が難しく、同じ樹種でも比重や年輪密度、含水率によって強度の差が生じます。
そのため安全率を十分に考慮する必要があります。

木材は、コンクリートや鋼材などの構造材と比較した場合、重要に対して強度が大きいのが特徴です。

例えば、スギと鋼を比較した場合、引っ張り強度では1.2倍以上の強度があります。

木材の老朽化

木材は経年によって劣化していきます。
これは天然資材であるがゆえ、当たり前のことです。

木材は、腐朽・虫蟻害・風化により老朽化していきます。

特に構造材の場合、腐朽・蟻害などより有効断面が小さくなると建築物の損壊に繋がることになります。

そのため、木材の老朽化を防ぎ耐久性を維持するために、管理が大切です。

腐朽

腐朽菌によって木材の成分であるセルロースやリグニンが分解されます。
分解された木材は、手で触るだけで崩れるほど脆くなってしまいます。

腐朽菌が繁殖するためには4つの条件があります。

  1. 適当な温度
  2. 養分(セルロース)
  3. 湿気・水分
  4. 酸素(空気)

この4つの条件が揃うことで腐朽菌が繁殖します。

例えば、水中にある木材が長年腐らないのは、水中では酸素が不足するためです。

腐朽菌にとって繁殖しやすい環境は、温度20~40度、湿度80%です。
これは高温多湿な日本にとって、満たしやすい条件になりますね。

建築物での環境では、換気の悪い床下、浴室などの水回りなどにあたります。

蟻害

シロアリにとって過ごしやすい環境は、腐朽菌が繁殖しやすい条件と同じです。

シロアリは種類によって、生息地が全国的に広がっているものと、地域的なものがあります。

シロアリの対策としては、薬剤を散布したり、木材に塗布や注入するものがあります。

薬剤は人体へ悪影響があるため、選択は専門家と相談し、慎重に決めてください。

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木材の可燃性

木材の発火点は250~260℃です。
しかし、加熱されると200℃くらいから木材の成分が分解され、可燃性のガスを出し引火する。

※木材の成分…セルロース・ヘミセルロース・リグニン

可燃性への対処として…

  • 石膏ボードのようなもので被覆する
  • 薬剤により木材そのものを燃えにくくする
  • 燃え代(木材が中心まで燃えないための余裕)を加えた大断面にする

 

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