日本の木構造の技術は、古代から中世にかけて中国大陸の影響を受けて発達してきました。
木構造が発達してきた理由として
- 良質な木材が豊富に産出される
- 木構造が高温多湿な日本の風土に合っていた
- 地震が多い日本では組積造が敬遠された
- 大工道具や独自の建築技術が発達
以上があげられており、日本と相性の良い建築構造になっています。
木構造とは
木構造とは、建築物の骨組みに木材を用いた構造のことです。
木材を骨組みとしているため、次のような長所と短所があります。
長所
木材は加工性に優れ、取り付け作業が容易になる。
木材は鋼材やコンクリートに比べ、軽量である。
軽量でありながら、強度が大きく柔軟性がある。
自然な木目が美しく、肌触りや香りを楽しむことができる。
短所
木材は燃えやすく延焼を受けやすい。
接合部が弱いため、骨組みが変形しやすい。
湿気により腐りやすい。
白アリなどの虫害をうけやすい。
構造形式
構造形式の種類
木材による住宅の作り方を分類すると大きく軸組構法・枠組壁構法・プレファブ構法があります。
軸組構法は日本の在来構法です。
対して枠組壁構法は2×4(ツーバイフォー)構法と呼ばれ、北米で広く行われている在来構法です。
軸組構法は架構式の構造です。
木材で土台・柱・桁・梁など主要な部材を組み立ててつくります。
一方、2×4(ツーバイフォー)構法は床枠組や壁枠組を組み立てて一体化する構造形式です。
構造用合板などの面材を打ち付けてつくります。
2×4(ツーバイフォー)構法は加工、組み立てが簡単です。
そのため、工事期間が軸組構法より短くなるのが特徴です。
軸組構法
日本で最も主流の工法です。
住宅の7~8割がこの工法で建てられています。
基礎の上に木の土台を据えて、柱と柱を梁で水平につなぎます。
それを対角線を筋交いで補触します。
筋交いの量と配置バランスが耐震強度を左右します。
軸組構法はデザインや間取りの自由度が高いのが特徴です。
増改築する際も比較的容易に対応できます。
しかし、構造指針があいまいなため、家の出来栄えが大工さん一人ひとりの技量によって変わる可能性があります。
また、接合部の施工が良くないと、将来きしみや傾きなどの欠陥が生じることもあります。
メリット
- 間取りや外壁材料、屋根の形状など設計の自由度が高い
- 2000年の建築基準法改正を機に、耐震性能が向上
- 窓や出入り口などの開口部が大きくとれる
- 増改築も容易にできる
- コストも比較的安い
デメリット
- 家の精度が熟練度に左右されやすい
- 接合部の施工が悪いと不具合が起こることがある
- 柱のない大きな空間などの場合は設計の自由度が低い
<こんな人に向いています>
・家の間取りやデザインにこだわりたい
・将来的に増改築を視野に入れている
・コストを抑えたい
・入居する時期や期限を考えていない
最近はあらかじめ工場で木材を加工する「プレカット工法」が主流となっています。
用意された資材を搬入し、現場ではそれを組み立てるだけという状況に変わってきています。
そのため、大工の腕に左右されるリスクは減少傾向にあります。
2×4(ツーバイフォー)構法
2×4構法はフレーム上に組まれた部材と合板であらかじめ床、壁、天井の面を作ります。
それらを6面体に組み合わせた「面材」で支える構法です。
北米の住宅の9割以上で採用されており、耐震性や耐火性、気密・断熱性に優れています。
また、合理的に標準化された工法です。
そのため、工期が比較的短く、出来上がりにバラつきが出にくくなっています。
しかし一方で、構造体が壁のため軸組構法よりも制約があり、増改築の自由度は低めです。
メリット
- 在来工法と比較して、1.5~2倍程度の耐震性がある
- 気密・断熱性、耐火性に優れる
- 工期が比較的短い
- 大工さんの技量に左右されず、出来上がりにバラつきが出にくい
デメリット
- 木造軸組工法に比べて構造に制約がある
- 窓や出入り口など大きな開口部を設けにくい
- 大規模な増改築がしにくい
<こんな人に向いています>
・地震や火災に強い家を建てたい
・将来的に増改築を考えていない
・早く家を建てたい
耐震性に優れた2×4構法の家は、阪神大震災でもほとんど被害を受けなかったというデータがあります。
メリットの多い構法ですが、「建築中の雨に弱い」という弱点はあまり知られていません。
しかし、下から構築していく2×4(ツーバイフォー)構法では屋根が出来るまでにどうしても時間がかかってしまいます。
そのため、建築中に雨が降ると構造材が水に浸ってしまいます。
雨の対策として最近は工場である程度の段階まで組んだものを現場で一気に組み立てる方法が主流となっています。
その他の構造形式
丸太組構法
丸太や角材を水平に積み重ねて、隅角部または交差部を井桁のように組み上げて壁を構成する構法です。
一般的にはログハウスのような構法で、日本の校倉造りも同じ構法になります。
木質系プレファブ構法
現場の生産性を高めるため、現場での加工や作業をできるだけ減らす目的で考案された構法です。
規格化された部材を工場で生産し、現場で組み立てます。
パネル構法が主体で、壁パネル同士を接合するために、接着剤や金具を用いるのが特徴です。
まとめ
軸組構法・2×4(ツーバイフォー)構法でも新耐震基準にもとづいた対策が施されるので安心できます。
とはいえ、その後ずっと何もしなくていいわけではありません。
建築後、構造や土台が湿気などで腐食したり、シロアリ被害などがあれば、耐震性が損なわれます。
どの構法でも、家は建ててからが大事です。
いつまでも安心して暮らすためには、メンテナンスが欠かせません。
リフォームをするときは予め特徴を理解し、構法にあった施工をしましょう。