浴室での入浴行為は1日の汗と疲れを流すだけではなく、休息という目的もあります。
しかし、高齢者の屋内での事故が起こりやすい場所でもあります。
そのため、浴室を高齢者対応・介護対応のバリアフリーへとリフォームする際には気をつけたいことが多くあります。
また、使われる方の体格や運動能力に応じた細かな気配りも欠かせません。
Contents
浴室の危険性
浴室では、身体を洗う・浴槽への出入り等の複雑な動作が必要とされています。
高齢者の住宅内での死亡事故も浴室での発生率が高くなっています。
そのため、特に安全についての注意が必要とされています。
冬場のヒートショック
冬場は浴室が寒いですよね。
浴室に限ったことではありませんが、寒い脱衣所などの衣服を着脱する場所から、温かい浴室へ移動すると問題が発生します。
急激な温度差が脳や心臓に負担をかけ、ヒートショックが大きな事故につながっています。
寒い時期にはあらかじめ脱衣所と浴室を暖めて温度差を少なくしましょう。
転倒の危険をなくす
浴室は水濡れ、石鹸、洗面器など足元が不安定で転倒の原因となるモノが多い危険な場所です。
また浴槽も首までつかるような入浴スタイルにも危険が潜んでいます。
浴槽では、無防備な裸です。
一人で利用することからも、特に安全性に配慮する必要があります。
浴室の広さ
高齢者になると狭い浴室だと不便になります。
浴室の広さは自立して入浴できる場合は1365mm×1820mm程度あれば良いとされています。
介助を必要とする場合には、より広い浴室が必要とされてきます。
その場合は、1820mm×1820mm程度といわれています。
高齢者の浴槽の選び方
高齢になると足を持ち上げる筋肉が衰えがちです。
そのため、またぎやすい高さの浴槽が良いといわれます。
浴槽は和風浴槽と洋風浴槽があります。
和風の場合は浴槽が深くなり、出入りが困難になります。
洋風の場合は浴槽が長くなるため、入浴した際に身体が不安定になりやすいという問題があります。
そのため、和風洋風両方の長所を併せ持った和洋折衷バスが適切だといえます。
出入り容易な浴槽は和洋折衷式
長さが1000~1350mm
幅550~600mm
深さ500mm
ただし、ここで注意したいのが落とし込みタイプの浴槽へのリフォームです。
浴槽の縁は床から適度な高さでも、浴槽の底が床より低くなっている場合には危険です。
あくまでも、縁から浴槽の底までの深さを基準に判断しましょう。
また、使用する方の体格にもよりますが、床との高さがあまりにも低くても入りにくいものです。
浴槽へ入るには直接またいだり、腰かけて入ることがあり、両者の方法を考慮する必要があります。
深さは一般的に400mm程度が安全と言われています。
さらに、腰を掛けて入ることができるように縁の部分が広くなっている浴槽もあります。
安定性が増すため、介護の際にも役立ちます。
こちらの記事に浴槽の種類について解説しています。

http://reform-answer.info/2018/05/06/bathtub-material/
浴室のバリアフリー設備
手すりの設置
浴室では移動や身体を洗うために立ったり座ったりが頻繁になります。
また、浴槽へ入るにも手すりは大きな助けになります。
ただし、注意したいのはその位置です。
浴室の大きさ・身体の状況等によって、手すりの位置や本数が変わってきます。
- 浴室への出入り用
- 身体を洗う時に腰を下ろす際の支え
- 立ち上がるため
- 浴槽への出入りでまたぐ際
- 身体を保持するため
- 入浴中に身体を保持するため
移乗台の設置
手すりに加えて移乗台(腰を掛けて浴槽への出入り動作を行う台)も設置すると便利です。
移乗台は、特に足腰が弱っている方に有効です。
浴槽デッキカウンターに腰掛けてから入浴することで姿勢が安定し、転倒防止となります。
移乗台は移動が可能で、不要な時には取り外しができます。
また、移乗台を洗体用の際に座って利用することも可能です。
高さは浴槽の縁と合わせることによって、移動がスムーズに行えるようになります。
引き戸のドアに変更
浴室のドアは折り戸か引き戸がおすすめです。
特に介助者や車いすの利用がある場合は、引き戸が望ましいです。
それは引き戸は開閉の際も浴室内のスペースが最大限に活用できるためです。
ドアが狭いと介護の際、車イスが通りにくい可能性があります。
特に内側に押して開くドアの場合には、不便な点が多くあります。
それは中で倒れた方がいる場合です。
内側に押して開くドアだと、開く際に身体に当たってしまいます。
すると、ドアが開けないという事態に陥ります。
その点、引き戸であればその心配がありません。
しかし、引き戸はドアを引き込むスペースが必要であることと、高コストが難点です。
開口部の幅は、800mmは欲しいといわれています。
また、ドア部には段差が生じないものを選ぶようにしてください。
既存で段差が生じている場合には、浴室の底上げ工事など大掛かりなリフォ―ムになる場合もあります。
段差には、浴室すのこを用いて解消する方法もあります。

滑りにくく冷えない床材の選び方
水だけでなく石鹸やシャンプーなど、浴室では足元が不安定になり滑る危険性があります。
浴室での転倒事故を防ぐため、床材は滑りにくいものを選ぶ事が基本です。
また、冬の寒さで床が冷えないよう、保温性の優れた床材を選ぶ事も重要です。
さらに、肌触りも重要です。
浴室は素足で入る場所ですので、ザラザラしたものは避けましょう。
ザラザラしていると転倒した際に擦り傷ができてしまいますよね。
具体的におすすめの素材は樹脂素材や木材が滑りにくく温かくなっています。
タイルの場合も、滑り止めや保温加工が施されたものがあるので、素材選びの際にしっかり確認しましょう。
また、肌触りについては、実際にショールームなどで触って確認することをお勧めします。
滑り止めの加工や処理、また後付けできるシートやマットなどの選択肢もあります。
手入れのしやすさや肌ざわりなどを考慮しつつ、最適の滑り止めスタイルを選んでください。
同じ水廻りのトイレのバリアフリーリフォームの記事も書いています。
そちらも参考にすることで選択肢が広がることと思います。

暖房・非常用ブザーなど
高齢者の浴室内での事故で意外に多いのが溺死です。
溺死の原因の一つとして、一般的にヒートショックと呼ばれている現象があります。
暖かいリビングから寒い浴室に移動すれば高血圧による脳出血が起こる危険が高くなります。
逆に熱いお湯で温まった血管が開きすぎれば低血圧となり脳貧血を引き起す危険が高まります。
血圧の急激な変化のほか、脈拍が速くなると心筋梗塞を起こすことも考えられます。
この血圧の変化は、高齢者や血圧の高い人では、ヒートショックが起こりやすくなっています。
浴室などで一時的に意識を失った場合、その倒れた方や倒れた位置によっては悲惨な事故となるのです。
そこで、高齢者の方が使う浴室リフォームでは、脱衣所や浴室に暖房設備を設置することも合わせて検討したいもの。
万が一の事態に備え、非常用のブザーがあると安心。
非常用ブザーは、リフォームの際に設置しておくと万が一の時の備えになります。
ブザーは、浴室はもちろん、脱衣所にも付けておくようにしましょう。
ヒートショック対策の暖房と、非常用のブザーを浴室リフォーム計画の一環として検討してみてください。
住宅全体の断熱はこちらの記事に書いています。

浴室の部位別バリアフリーリフォーム費用
浴室・浴槽それぞれのバリアフリーリフォーム費用の目安は以下の通りです。
浴室の部位別バリアフリーリフォーム費用
・段差解消工事:約5~7万円
・床材張替え工事:約10~20万円
・浴室の広さ変更工事:約30~50万円
・浴室ドア交換工事:約6万~20万円
・暖房設備設置工事:約20~50万円
・壁手すり取り付け工事:約3万~5万円
浴槽のバリアフリーリフォーム費用
・浴槽交換工事:約10万~40万円
・浴槽内の手すり追加工事:約5千~1万円
・浴槽内の昇降リフト追加工事:約20~30万円
浴室のバリアフリー化の業者選び
浴室のバリアフリーリフォームを検討するにあたり、業者選びは非常に重要です。
バリアフリー化とは自分自身はもちろんご家族の安全を守るための工事です。
施主の要望を叶えるだけでなくプロとしての提案ができる、経験と実績のある業者を選びましょう。
業者選びのひとつとして有効なのが、ホームページで「施工事例」をチェックすることです。
特にバリアフリーリフォームは業者のノウハウと経験が重要な要素となっています。
過去に施工事例があるということは、それだけ経験が豊富なことにつながります。
また、写真を見ることによって、仕上りのイメージがつかみやすくなるでしょう。
また、浴室の設備はメーカーから選ぶことも有効となっています。
大手のメーカーではショールームで実物を見て使い勝手を確認することができます。
バリアフリーリフォームは、私たちの家をリフォームする場合と、両親などの家をリフォームする場合のパターンがあります。
私たちの場合であれば、ある程度のイメージがつかみやすいでしょう。
しかし、私たち以外であれば、細かい要望までつかみとるのは難しくなります。
その際に、ショールームへ一緒に見に行くことで、設備を触りながら要望を引き出すことが出来ます。
浴室全体をリフォームするような大規模の場合は、選んだメーカーが提携している業者にお願いするのが無難です。
ショールームなどに足を運んだ際には、提携する施工業者について質問してみるといいでしょう。